第13回 「終末期がん患者さんの症状」
2013-03-13
前回は、終末期がん患者さんは亡くなる数日前まで日常的なことが結構出来ているのだということをお話ししました。今回は、終末期がん患者さんにはどのような症状が現れるのだろうかということをお話ししたいと思います。
(表1)は当院で関わらせて頂いた終末期がん患者さんがケアを開始したときにどのような症状を訴えられたかを集計したものです。実はもっと多くの症状を訴えられたのですが、ここでは30%以上の患者さんが訴えられた症状のみを示しています。
(表1)終末期がん患者さんの症状(在宅緩和ケア(在宅ホスピス)開始時)
症状 %
①全身倦怠感 71.2
②食欲不振 70.9
③痛み 66.7
④便秘 55.1
⑤不眠 49.6
⑥呼吸困難感 42.2
⑦浮腫(むくみ)38.3
⑧痰 37.1
⑨頻尿 35.7
⑩吐き気 34.0
⑪咳嗽(せき) 30.4
⑫腹満 30.0
※(対象)2008年7月から2013年3月までに当院がケアを行った末期がん患者367人
この表を見ると終末期がん患者さんには多くの症状が出現することが分かります。そして、多くの患者さんはいくつもの症状を訴えられます。しかし、全ての症状が非常につらい訳ではなく、多くの場合は様子を見ることが出来できます。この表は在宅緩和ケア(在宅ホスピス)を開始したときに患者さんから伺ったものですので、患者さんの病状が進み死が近くなるにつれて症状を訴えられる割合は多くなります。
それでは、そのような症状はいつ頃から出現するのでしょうか。(図1)は終末期がん患者さんが訴えられる症状が患者さんが亡くなる何日前から出現したかを調べたものです。
(図1)主な症状が出現してから生存した期間(日)
※淀川キリスト教病院「緩和ケアマニュアル」より抜粋
この図を見るとがんの痛みは患者さんが亡くなる数ヶ月前から出現することが分かりますが、それ以外の症状はほとんどが亡くなる前、1ヶ月前後になってから出現していることが分かります。そして死亡に至るまでにその割合が急速に増えることが分かります。従って、この時期にしっかりとした症状緩和が必要になることが分かります。
一般的にがん患者さんはお元気なうちはあまり多くの症状に悩まされることは少なく、いたずらに恐れる必要はありませんが、ある程度の症状が出現したときにはしっかりとした緩和ケアを受ける必要があります。特に終末期も在宅で過ごしたいというご希望がある患者さんならば、そうしないといろいろな症状に悩まされ、結局は病院に入院しなければならなくなります。
「早い段階から緩和ケアの導入を」を合い言葉にしましょう。
院長 前野 宏
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