第17回 医療用麻薬(オピオイド)−がん患者さんにとってとても強い味方です−」
2013-04-17
がんによる痛みの治療の主役はオピオイド(opioid;医療用麻薬)です。「オピオイド」のルーツは古く、紀元前よりケシの実から採取されたアヘン(opium)が鎮痛薬として用いられていました。その後、アヘンから有名なモルヒネが抽出され、現在広くがんの鎮痛薬として使用されることとなりました。薬理学的な特徴からモルヒネの仲間をオピオイドと呼んでいます。
がんの痛みの治療はこのオピオイドをいかにうまく使うかにかかっていると言っても良いでしょう。しかし、一般市民の中には“麻薬”とか“モルヒネ”という言葉を聞くと非常に強い抵抗感を持つ方がいらっしゃいます。そういう方々が抱く懸念は
「“モルヒネ”を使わなければならないということはもうすぐ死ぬのではないか」
「“麻薬”を使うと中毒になるのではないか」
「“麻薬”を使うと頭がおかしくなるのではないか」
「“モルヒネ”を使うと命の長さが短くなるのではないか」
というようなことだと思います。しかし、これらは全て誤解です。オピオイドは正しく使えば、このようなことは起こりません。しかし、そのためにはオピオイドに精通した先生の指導の下に使用することが重要です。
現在、がんによる痛みに対して良く用いられるオピオイド(注射薬を除く)を(表1)に掲げましょう。表の右側に書いている「弱オピオイド」「強オピオイド」は前回の講座でお示ししたWHOの除痛ラダーのそれぞれ第2段階、第3段階に当たります。しかし、この間もお話ししたように、このラダーは必ずしも第1→2→3段階と進んでゆく訳ではなく、第1段階から第3段階に直接進むことは良くあります。
オピオイドには便秘、眠気、嘔気といった副作用があります。これらは時に強く出ることがありますが副作用に対するお薬を使用することによりほとんどが起こっても軽度です。しかし、まれには副作用が強く出るので別のオピオイドに切り替える必要が起こることがあります。オピオイドはとても重要なお薬ですので、勝手に飲むのを止めることは絶対にしないでください。副作用が起こったら必ず先生に相談しましょう。先生の指導の下でオピオイドとうまくつきあっていただきたいと思います。
(表1)がん疼痛に良く使われている主なオピオイド(医療用麻薬)
院長 前野 宏