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第18回 手強いがんの痛みをどう取るか –大丈夫、いろいろな手段があります−

2013-04-23

 前回はがんの痛みに対する治療の主役はオピオイド(医療用麻薬)であり、内服薬や貼り薬のお話をしましたが、それ以外に注射薬もあります。しかし、オピオイドの量を増やしても、または種類を変えてもなかなか良くならない手強い痛みもあります。また、オピオイドの量を増やそうとしても副作用ばかりが強く出てくることもあります。
 このようなときにどうするか。手段としては以下のようなものがあります。
 ・鎮痛補助薬
 ・放射線治療
 ・神経ブロック

1)鎮痛補助薬
 「鎮痛補助薬」とはそのお薬自体は鎮痛薬ではないけれども、オピオイドなどの鎮痛薬と一緒に使うことにより鎮痛効果を発揮するお薬のことを指します。前回お話ししたWHO除痛ラダーでは、第一段階から用いることがあります。鎮痛補助薬は非常に種類がたくさんあります。大まかな分類としては
 ・抗うつ薬
 ・抗けいれん薬
 ・抗不整脈薬
 ・ステロイド
などがありますが、他にもまだあります。それぞれに多くのお薬がありますが、どれも一長一短で、「これを使えば、ばっちり」という風にはなかなかいきません。そして、それぞれのお薬に特徴があり、痛みの性質や原因、体の状態などで使われるお薬が異なります。また、鎮痛補助薬自体にも副作用がありますので鎮痛補助薬を使わなければならないような痛みの治療は緩和ケアに習熟している医師の元で行われるべきだと思います。
 しかし、オピオイドでは十分に効果がなかった手強い痛みが鎮痛補助薬を使うことで劇的に良くなることもありますので、重要な手段なのです。ちなみに当院が在宅で関わり、痛みの治療を行ったがん患者さんのうち鎮痛補助薬を使用した方は18%でした。    

2)放射線治療
 放射線治療は元来、がん自体に対する治療法ですが、がん疼痛に対しても有効なことがあります。特にはっきりとした効果が分かっているのは、骨転移による痛みの場合です。しかし、効果は高いのですが、鎮痛効果が現れるのは照射を開始してから2週間程度経ってからで4〜8週間で最大になるといわれています。なおかつ、一般的には照射が1回だけで済むことは少なく、2週間くらいかけて10回くらいに分けて照射を行うことが一般的です。なぜ何回にも分けてかけなければならないかというと、1回の照射線量が多くなると照射された組織のダメージも大きくなるからなのです。照射自体は短時間で済みますが、その間絶対に動かないようにしなければならないですし、治療期間中に入院あるいは通院しなければならないというのも在宅にいる患者さんにとっては負担も大きい治療となります。ちなみに過去に私たちが関わった患者さんで在宅緩和ケア(在宅ホスピス)行った期間中に痛みのために放射線治療を行った方はひとりもありません。

3)神経ブロック
 神経ブロックという方法は習熟した麻酔科医の元で行われれば、がんばかりではなく手強い痛みに対してきわめて有効な手段です。
 神経ブロックの原理を簡単に言ってしまうと、痛みを感じるのは神経ですので、痛みを感じている神経を麻酔薬や鎮痛薬を使って感じないようにさせる(麻痺させる)方法です。そのように言ってしまうと簡単なようですが、実際には痛みを感じている神経を見つけ、そこにピンポイントで麻酔薬を注入するというのは専門的な知識と技術が必要になります。また、そのためにはX線透視室という大がかりな装置も必要になります。
 私たちの関わった患者さんで在宅期間中に神経ブロックを行った患者さんは1名もいませんでした。ただ、患者さんを紹介してくださった病院で硬膜外チューブという管を脊椎の部分に留置してお家に戻ってこられ、その管から在宅で痛み止めのお薬を注入し続けて有効であった患者さんが1名だけいらっしゃいました。
 
 以上、いろいろながん疼痛治療法をお話ししましたが、一般的ながん疼痛はオピオイドを中心とした鎮痛薬の投与によりほとんどが緩和可能です。しかし、ごく一部の手強い痛みについてもいろいろな手段があることがおわかりいただけたことと思います。
                     院長 前野 宏

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