ホームケアクリニック札幌
緩和ケア訪問看護ステーション札幌

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第19回 呼吸困難−「息苦しさ」に対しては色々な方法を合わせて対応します−

2013-04-30

 当院で在宅緩和ケア(在宅ホスピス)を提供したがん患者さん373人のうち、訪問開始時に呼吸困難を訴えられたのは26%でした。そのうち、肺がん患者さんに限ると44.6%で、肺がんの患者さんは呼吸困難が多い傾向があります。しかし、肺がん以外の患者さんでも、がんが肺に転移したり、色々な理由で肺に水が貯まる(胸水)と呼吸困難が起こることがあります。また、がんと関係なくても特にご老人の場合、慢性の肺の病気(肺気腫、間質性肺炎など)合併していることが多く、こういった元来お持ちの病気によって呼吸困難が起きることも少なくありません。「呼吸困難」はかなり一般的な症状と言っても良いでしょう。

 さて、呼吸困難の治療ですが、他の症状についても共通することですが、まず原因を治療できる場合にはそれを行います。例えば、肺がん自体によって呼吸困難が起こっていると考えられる場合には化学療法とか放射線治療によってがん自体を小さくすることが出来れば症状も良くなります。また、肺炎が起きていて呼吸困難が起きている場合には、抗生物質を使って肺炎の治療をすることにより、症状が良くなることがあります。また、胸水が増えてきて呼吸困難が起きている場合には、外から針を刺して水を抜くこと(胸腔穿刺)により症状が楽になることがあります。

 しかし、上記のような呼吸困難の原因を治療できる場合は必ずしも多くありません。そして、病気が進んだ場合には上記のような治療は患者さんに負担をかけるので好ましくありません。それに対して、以下の治療法は全ての呼吸困難の患者さんに適応があり、実際にはこれらの方法を組み合わせて治療を行います。

1)在宅酸素療法
 現在は、酸素療法が在宅でも手軽に利用することが出来ます。当院でケアを行った患者さんのうち呼吸困難があった患者さんの62%が在宅酸素療法を行っていました。呼吸困難がある患者さんは「急につらくなったらどうしよう。」という不安を持つ場合が多いのですが、呼吸困難が比較的軽い段階から在宅酸素を準備しておくことは「備えあれば憂いなし」ですね。

2)モルヒネ
 モルヒネについてはがんの痛みの治療ですでにお話ししましたが、モルヒネは呼吸困難にも効果があることが知られています。さらに、頑固な咳にも効果があるので、一石二鳥ですね。飲み薬の場合や注射で投与する場合もあります。

3)ステロイド
 ステロイドという種類のお薬はこの後の項目でもたくさん出てきますが、緩和ケアにおいて、ステロイドはとても頼もしい薬です。「魔法の薬」と言って良いくらい色々な使い方があるのです。全ての呼吸困難に効果があるとは限りませんが、劇的に効果がある場合もあります。

4)抗不安薬
 先ほども述べましたが、呼吸困難という症状は「つらくなったらどうしよう。」という不安感が伴う場合が多くあります。そういった場合には抗不安薬という種類のお薬をうまく使うことにより、不安を和らげ、苦痛を緩和することが可能となります。特に、症状が非常につらい場合には抗不安薬を使って一時的に睡眠を取って頂くような場合(鎮静)もあります。

 呼吸困難は時に非常につらくなってしまう場合がありますが、だからといってすぐに入院する必要はありません。上記のようなお薬を合わせて使うことによってかなりの症状が緩和されます。そのためには症状緩和の技術がしっかりした信頼できる在宅医や訪問看護師にゆだねることが大切です。

                             院長 前野 宏

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