第2回 終末期になったらどこで過ごしたいか―アンケート結果―
2012-12-21
日本人は、自分が終末期だと分かったとしたら、どこで過ごしたいと考えているのでしょうか。一般市民を対象としたアンケート結果を見てみましょう。
図は、日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団が2011年度に一般市民に対して行ったアンケートの結果です。性別、年代によって若干の差はありますが全体の傾向はほぼ同じといって良いと思います。問いは「(あなたががんになって)余命が限られている場合、自宅で過ごしたいか」というものです。その問いに対し、「自宅で過ごしたいし、実現可能だと思う」が18.3%、「自宅で過ごしたいが、実現は難しいと思う」が63.1%でした。つまり、両者を合わせると約8割以上の日本人は、「(できれば)自宅で過ごしたい」という希望を持っているということになります。同じようなアンケートが他にもなされていますが、ほぼ同じような結果が得られているようです。多くの日本人は、終末期になったら自宅で過ごしたいという願いを持っているのです。
それでは、現実はどうでしょうか。2009年1年間でがんで亡くなった日本人は約34万5千人ですが、そのうち在宅(自宅だけでなく老人施設も含まれますが大部分が自宅です)で亡くなったのは約3万人、割合にすると8.6%でしかありません。アンケート結果に照らしてみると、自宅で過ごしたいと願っている人の約1割しかその希望が叶わなかったということになります。とても少ない数字であると言わざるを得ないでしょう。逆に言うと、日本人のがん患者さんは大部分が病院で亡くなっているということになります。それを欧米と比較するとどうでしょうか。国民のがん患者さんの病院死の割合は日本93%(2002年)、
アメリカ37%(1998年)、オランダ28%(2000年)となっており、日本が突出して病院死が多いことが分かります。
病院死が多いから、すなわち在宅死が少ないからだめなのだとは一概には言えないかもしれません。しかし、このことからいろいろなことが考えられると思います。このシリーズでは、在宅死という選択肢があること、在宅死の良さ、在宅死をするためにはどうしたら良いのかといったことを皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
院長 前野 宏
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