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第23回 食欲不振−「食べる量」よりも「食べる喜び」を大切に−

2013-06-05

前回は「だるさ」についてお話ししましたが、今回は「食欲不振」についてお話しします。「だるさ」も「食欲不振」も終末期がん患者さんには大なり小なりほとんど全ての方に出現します。食欲が無くなってくると患者さんはぐったりし、生命力が失われてゆきます。それと逆に食欲が回復し、食べることが出来るようになると患者さんの生命力は増し加わり、生き生きとしてきます。しかし、大切なことは、食事の「量」ではなく、患者さんが食べることの「喜び」を感じることが出来るかどうかです。この「喜び」は食べられないからと言って食事の代わりに点滴をして得られるものではありません。後の項目でもお話ししますが、点滴は終末期がん患者さんの場合には食事の代わりにはならないのです。

1)食事に対する工夫
 「食べる」ということは、人間にとってはただ単に栄養を補給するという以上に、「食べる喜び」、「味わう楽しみ」など人間が生きる上での本質的な意味がそこにあると思います。ですから、食欲の無い患者さんに対して、「食べないと体に悪いから」とか「食べないと元気がつかないから」と言って、無理矢理食事を摂らせようとしたり、栄養価の高いものを食べさせようとしたりすることは決して良いことではありません。かえって、楽しみであるはずの食事がとてもつらい作業になってしまいます。

 終末期がん患者さんの食事について大切なことは①食べたいものを②食べたいときに③食べたい(量)だけ食べてもらうことです。無理に栄養価の高いものを食べさせようとかたくさん食べさせようとしてはいけないのです。

 逆に、食欲が無い患者さん、腸閉塞などで食事が入らない患者さんなどにはいろいろと工夫する必要があります。食欲が無い患者さんに対してはシャーベットや果物など口当たりの良いものを出すとか、食べたい気持ちはあるけれど腸閉塞があって飲み込むことが出来ない患者さんの場合には、食事を口の中で咬んで飲み込まないで出すということをすると、患者さんは「味わう」という喜びを感じることが出来ます。しかし、この“技”は若干訓練が必要なようです。また、腸閉塞の患者さんで「胃管」が入っている場合には、水分は飲んでも管から出てくるので、ジュースやスープなどを味わうことができます。そういうことをとても喜んでおられた患者さんがいました。

2)食欲不振に対する治療
 また、食欲不振に対してはお薬が効果があることがあります。「倦怠感」のところでも出てきましたが、「ステロイド」という種類のお薬は食欲を改善する作用があります。ステロイドには色々と種類がありますが、緩和ケアにおいては「リンデロン」、「デカドロン」、「プレドニン」といった薬剤が良く使用されます。詳しくは担当の医師に聞いてください。
 食事は「食べる量」ではなく「食べる喜び」を大切にしましょう。 

                         院長 前野 宏

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