第30回 輸液(点滴)について
2014-04-03
がんの患者さんが自宅で過ごす時に輸液をすることがあります。人工的水分や栄養を入れるためです。当院では患者さんの約3割が何らかの輸液を行いました。
1. どんな時に輸液をするのですか?
在宅で過ごす患者さんに対しても、輸液が必要な場合には積極的に行います。しかし、終末期で「食べられなくなった」というだけで輸液を開始することはあまりありません。終末期で病状が悪化している患者さんに輸液をすることで体が楽になったり、元気が出ることはあまり期待できないからです。逆に、水分を血管の中に強制的に入れることによって、浮腫(むくみ)が生じたりします。消化器のがんの場合には、腹水や腸液が増えてお腹が張ってしまう場合もあります。また、余分な水分が分泌物となって喉のあたりでゴロゴロしてつらさになってしまう可能性もあります。
しかしこういったマイナスもある反面、食事が取れなくなっている患者さんが輸液をすることで若干の延命(生命の長さを伸ばすこと)の効果はあるかもしれません。
従って、終末期の患者さんに輸液をするかしないかは「楽に過ごすこと」と「延命すること」の両者をはかりにかけながら患者さん、ご家族そして医療者が十分に話し合いながら決めてゆく必要があります。
2. 在宅での輸液はどのようにするのですか?
自宅での輸液の仕方もいくつかの方法があります。自宅は全ての処置を看護師が行ってくれる病棟とは違いますので、自宅で輸液をする場合は色々な工夫がいります。
一般的に外来などで行われる腕の静脈から輸液する方法は、家の場合ですと看護師がずっと付いている訳ではありませんので、輸液が静脈の外に漏れてしまうといったトラブルがあった場合にすぐに対応できないというデメリットがあります。また、毎回血管に針を刺されるのも患者さんにとっては苦痛になります。
一番簡単な水分補給には皮下輸液という方法があります。血管に入れる輸液と異なり、輸液が漏れて刺し替える必要が無く、安心です。万が一針が外れても、大きな事故にはなりませんから安心です。
中心静脈栄養は本格的な栄養補給になります。胸に皮下埋め込み型中心静脈ポート(CVポート)を作ると、皮膚の外側から針を刺して輸液ができます。
CVポートのメリットは針を抜くと入浴することができますし、直接管が皮膚から出ている場合より感染の危険性が減ります。比較的長い期間自宅で輸液をする場合には、入院中にCVポートを作ってもらうと良いでしょう。
院長 前野 宏
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