第32回 在宅酸素療法
2014-04-09
終末期に酸素吸入を必要とする患者さんは多くいます。当院では約4割の患者さんに在宅酸素療法(HOT)を行いました。
1.HOTが必要になるのはどのような場合ですか?
HOTが必要になるのは、肺がん等の病気の進行によって肺の機能が衰えて、呼吸困難感(息苦しさ)を感じる様になった場合です。安静にしている場合は症状が無くても、歩いた時とか、入浴、食事の時に息苦しくなる場合があります(労作性呼吸苦)。そのような場合には、動く時だけ酸素を吸入すれば済みますが病状が悪化すると、安静時にも酸素が必要になります。
ただ、終末期の全ての患者さんにHOTが必要になる訳ではありません。HOTは治療行為ですので、HOTが必要かどうかは医学的に医師が判断します。一つの指標となるのはこの後説明しますSpO2(酸素飽和度)ですが、一番重要なのは患者さんの症状(呼吸苦)です。SpO2が低下していても呼吸苦がなければ必ずしも酸素を投与する必要はないのです。
2.SpO2を説明して下さい。
SpO2は肺の機能(呼吸機能)を表す指標で、簡単に言ってしまうと血液中に酸素をどれくらい取り込んでいるかを表します。呼吸機能が正常な一般成人では95%以上ですが、老人などの場合はより低い値でも普通に生活している方は多くいます。
以前は、SpO2を測定するためには、動脈血を採取しなければならず大きな病院のICU(集中治療室)などでしか測定できなかったのですが、現在では、パルスオキシメーター(写真1)という便利な機器が安価になったので、自宅でも手軽に測定できるようになりました。
3.HOTを自宅で行うにはどうすればいいですか?
現在では、HOTは医療保険の適応になったので、比較的手軽に導入することができます(写真2)。自宅で過ごしている患者さんの主治医がHOTが必要であると判断した場合、医師が在宅酸素療法指示書という書類を書いて在宅酸素レンタル会社に連絡すれば、早ければその日のうちに業者の方が来て、酸素濃縮器を設置してくれます。必要であれば外出用の携帯酸素ボンベもレンタルできます。費用は医療行為として医療費の中に含まれます。
院長 前野 宏
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