第34回 むくみ(浮腫)について~リンパ浮腫とそのケア~
2014-04-22
「足がむくんでぱんぱんなんです。大丈夫でしょうか?」
当院が関わったがん患者さんの約半数に何らかのむくみ(浮腫)が認められました。むくみは患者さんにとって自分の体ではないような変化を感じたり、動きにくくなることでADL(日常生活動作)の低下につながります。また、患者さん、ご家族にとって不安の原因にもなると思います。
Q1. 浮腫はなぜ起こるのですか?
浮腫は全身に出現する可能性がありますが手足に出現することが多いようです。長時間の立ち仕事などによって生理的に起こるものとがんなどの病気によって起こるものがあります。後者の原因としては足の筋肉が弱くなって循環が悪くなることや、心臓、腎臓、肝臓の臓器不全や低栄養、低蛋白、甲状腺の機能低下などがあります。
「リンパ浮腫」というものもあります。特に乳がん、子宮・卵巣がん、前立腺がん、大腸がんなどで起こりやすく、病気自体や手術によるリンパ節切除、放射線治療、リンパ節転移などによってリンパ液の流れが悪くなることによって起こります。
Q2.浮腫が起こりやすい場所と症状を教えて下さい? またそのような時の対処法を教えて下さい
足の膝から下、手足の甲などがむくみやすい部位です。陰部やむくんでいる腕や脚に続く胴体がむくむ場合もあります。症状は、冷える、だるさ、重さ、疲れやすさ、皮膚の乾燥、多毛などがあります。その他、リンパ液の逆流からやわらかい皮膚に小さな水疱(リンパ小疱(しょうほう))ができたり、毛穴からリンパ液がしみ出るようなリンパ漏などもあります。
浮腫がある場合、皮膚は乾燥し、とても傷つきやすい状態になっています。ですから傷つきやすく、そこから細菌感染すると重要化する危険性があります。発熱や手足の一部が熱をもったり、赤く腫れたりしたらすぐに医療者に相談をしましょう。むくみのある皮膚は見た目よりもとてもデリケートです。日常的に皮膚の保湿やスキンケアを行いましょう。
Q3.浮腫に対して患者や家族でもできるケアを教えて下さい
近年、少しづつですが専門的なトレーニングを受けた看護師がケアをする機会が増えてきました。内容としては、スキンケア、リンパマッサージ、圧迫包帯を使った圧迫療養、運動療法などを浮腫の状態に合わせて行います。
患者自身や家族ができる優しく撫でるようなセルフマッサージもありますが、医療者から正しい方法を指導してもらうことが大切です。指圧や強いマッサージなど間違ったケアをするとかえって浮腫を悪化させるので、浮腫のケアについては、まず医療者に相談をしましょう。
参考: スキンケアで使うクリームは、花王のキュレル(ローションタイプ)、医師による処方などでは、ウレパール、ヒルドイド、ザ―ネ軟膏などがあります。お風呂あがりや日々のケアで保湿クリームを(500円玉大)を手にとって、皮膚全体に優しく塗りましょう。
日常生活上の注意点:皮膚をよく観察して、保湿する。清潔に保つ。靴下や下
着衣類はゆるめにしてやわらかくしめつけない。深爪をしない。甘皮を切らな
い。日焼け、虫さされ、しもやけに注意する。体を洗う時に強くこすったり、
ナイロンタオルを使わない。立ちっぱなしや座りっぱなしを避け、ときどき屈
伸運動をする。時々、脚を体より10センチ程高くして休む。土いじりは手袋を
つけ、裸足で土や砂の上を歩かない、きつい靴やハイヒールを避け靴づれを予
防するなどが大切です。
田中 ひとみ(緩和ケア認定看護師)
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