第35回 在宅ホスピスのチームについて
2014-04-23
本講座の第6回でも書きましたとおり、ホスピス緩和ケアの基本はチームケアです。在宅ホスピスも同様です。ただ、病院の緩和ケアチームと異なり、在宅ホスピスでは患者さんの生活を支えるチームが加わりますのでより多彩で複雑になります。
1.在宅ホスピスチームの構成メンバーはどのような人たちですか?
まず医療チームです。医療保険から支払われます。まず訪問医師。在宅での主治医になります。主に在宅療養支援診療所の医師が多いですが、地域によっては病院の医師が訪問する場合もあるでしょう。そして、訪問看護師。ホスピス緩和ケアは治療よりもケアが中心になるのでその中心は看護師です。訪問看護師は訪問看護ステーションに所属している場合が多いですが、当院のように在宅療養支援診療所に所属している看護師もいます。在宅ホスピスの場合、医学的なことが多いため、在宅ホスピスチームの中心は医師、看護師が担うことが多いと思います。
さらに医療チームとしては、薬剤師の働きが大きいです。24時間対応してくれて、薬を配達していただくことが必要になるからです。
あまり多くはありませんが、在宅でリハビリをする場合があり、訪問リハビリも必要になることがあります。
次に、患者さんの生活を支える介護チームですが、主に介護保険でカバーされます。まず必ず必要なのはケアマネジャーです。介護プランを作成する重要な役割を持ちます。主に居宅介護支援事業所に所属します。
患者さんのお宅に訪問してサービスを提供するのがホームヘルパーです。訪問介護事業所に所属します。
介護ベッドやマットなどの介護機器をレンタルする福祉用具業者、訪問入浴を担当する業者も必要になることがあります。
また、元気なご老人は日中、デイサービスに通われたり、一時的にお泊まりをするショートステイを利用することもあります。
医療、介護のどちらかに分類されない職種で重要なのがソーシャルワーカーです。上記のように多くの職種が複雑に関わるのでその交通整理をする役割が必要になります。ソーシャルワーカーはそのための適任であると思います。
今後の可能性としては、在宅ホスピスボランティアの働きが期待されます。まだほとんど実践がなされていませんが今後重要な存在になることでしょう。
これらのメンバーは、患者さんの住所や紹介先の病院によって構成がその都度替わります。そこが、病院のチームと大きく異なる点です。
2.在宅ホスピスチームの特徴は何ですか?
在宅ホスピスチームをオーケストラにたとえると、それぞれのパートが役割を果たす必要がありますが、全員が同じ目標を持って心を合わせて演奏しないと言い演奏にはなりません。良い在宅ホスピスチームを一言で表すなら、「一体となったチーム」と言えるでしょう。
在宅ホスピスチームというオーケストラをまとめる指揮者の役割は、主治医だと思います。主治医の元に在宅ホスピスチームが一体となった動きをしなければなりません。
良いチームは患者さんと家族の希望を的確に把握し、患者さんの病状の変化を予測し、的確に対応してゆく必要があります。そのために、チームは良好なコミュニケーションをとりながら一体となった動きができなければなりません。
まず病院からの引き継ぎが重要で、退院時カンファレンスが重要になります。そして、最初の訪問日にできるだけ関係者が集まり、今後のケアの方針について一致した目標を持つことが重要です。さらに在宅ホスピスの経過の中では担当者会議も時々開催し、ケアの方向性を常に確認する必要があります。
このようにして在宅ホスピスチームではおのおのの職種が密に連携を取りながら、患者の病状や患者・家族の思いの変化に応じて柔軟に対応する必要があるのです。
院長 前野 宏
- 前の記事へ「第34回 むくみ(浮腫)について~リンパ浮腫とそのケア~」→
- 次の記事へ「第36回 在宅療養支援診療所 -医師の役割-」→