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第36回 在宅療養支援診療所 -医師の役割-

2014-04-23

 在宅ホスピスチームのまとめ役である在宅療養支援診療所(以下、在支診)の医師の役割を見てみましょう。

1.在支診とは何ですか?

 2006年に、診療報酬の改定が行われ、「在宅療養支援診療所」が設定されました。在支診の役割をまとめると「病院、他の診療所、訪問看護ステーション、介護サービスなどと連携して、がん患者の緩和ケアを含む、自宅での治療を支援することのできる診療所であり、往診および訪問看護が24時間可能な体制ができている」ということになります。
 在支診の数は平成22年現在、全国で12,487(北海道は289)で、少しづつ増加傾向にあります。しかし、全ての在支診が在宅ホスピスに経験を持っている訳ではありません。例えば、1年間で在宅での看取りを全く経験していない在支診が半数くらい存在するというのも事実です。

2.強化型在支診とはどのようなものですか?

 2012年の診療報酬改定から設定された診療所で、在支診の中でも在宅医療を積極的に行っている診療所を評価する制度です。条件としては、一定程度の医師数があり、1年間の在宅看取り数、緊急往診数が一定程度あるということです。しかし、この条件は1カ所の診療所だけでクリアする必要はなく、数カ所の在支診が連携してクリアすればいいことになっています。なお、この連携には在宅療養支援病院(在支病)も加わることができます。
 多くの在支診は医師1名のところが多く、いくつかの在支診が連携することで地域の在宅医療が充実することは良いことだと思います。ただ、在宅ホスピスにとっては、この連携がどの程度有用かは今のところ分かっていません。

3.在宅ホスピスにおける医師の役割を教えて下さい

 在宅ホスピスにおける医師の役割は、まず患者さんの主治医としての役割です。終末期がん患者の病状は短期間で大きく変化することがありますので、その患者の病気の状況を把握することが重要です。そして、これから起こりうることをあらかじめ予想し、患者さんの苦痛が生じないように対策を講じます。そして、今ある症状に対する徹底的な症状緩和を計ることは言うまでもありません。苦痛が強いと患者・家族は「やはり、入院した方がいいのでは?」と不安になってしまうからです。
 もう一つ大切なのは、患者さん、ご家族としっかりとしたコミュニケーションを築きつつ、人間としての信頼を得ることです。特に、医師はやたら説明をしたがりますが、まず患者さん、ご家族の話をしっかりと聞くことが大切です。短時間でもしっかりと聞くということです。このような医師が患者さん、家族から信頼を得ない事はないでしょう。
 そして患者さん、ご家族がどのような生活をしたいのかを伺いながら、それを実現できるようにチームに還元します。在宅ホスピスチームというオーケストラにおいて、医師はコンダクターの役割を意識すべきです。大切なのは、医師が自分の考えを押しつけるのではなく、チームメンバーの自発性を重んじながら、チーム全体をまとめあげることです。ここにおいても、医師は各メンバーの意見をしっかりと聞く姿勢が重要です。

院長 前野 宏

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