第46回 訪問リハビリ
2014-05-27
患者さんが自宅でリハビリを受ける制度を「訪問リハビリテーション(訪問リハビリ)」といいます。訪問リハビリは、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)、または、言語聴覚士(ST)などの療法士が、自宅や施設に訪問して行います。末期がん患者さんに対するリハビリは、身体機能の向上というよりも、生活の維持・改善や患者さんの希望を支えることを重視したものになります。
Q1.訪問リハビリの目的は何ですか?
リハビリとは機能回復訓練を意味し、以前より病気や怪我で失われた身体機能を回復、あるいは、それを補うための新しい機能を獲得し社会に復帰させることを目的としていました。しかし、近年は、緩和ケアやホスピスケアでの末期がん患者さんに対するリハビリが患者さんのQOL(クォリティー・オブ・ライフ、生活の質)を高めるという観点から、注目されてきています。末期がん患者さんは、徐々に身体機能が低下してゆくことが多いですが、リハビリによって自分でできることを少しでも長く維持することができたなら、その喜びは計り知れません。
Q2.在宅ホスピスでの訪問リハビリにはどのような効果がありますか?
第一に、自宅で安全に生活できるよう工夫します。最近はバリアフリーの家屋が増えてきましたが、病院や介護施設に比べると意外と障害が多いものです。階段はもちろん、元気な時には気にしていなかったちょっとした段差、スペース、トイレまでの動線などが、身体機能が衰えてくると大きな障害になってくることがあります。療法士のアドバイスによって動作を工夫したり、福祉用具の活用や環境を改善することで、不安を軽減して安全に在宅での生活を継続することができます。
次に、少しでも長く自宅で過ごすことができるために支援できます。在宅ホスピスを希望した末期がん患者さんの誰もがいずれ動けなくなるという不安を抱えています。本当は最期まで自宅にいたいのに、トイレに一人で行けなくなったら家族に迷惑がかかるから、その時は入院をしたいと考えている患者さんが多くいます。しかし、訪問リハビリで身体機能を維持したり、動作を工夫することで、食事やトイレなど日常の生活動作が続けられるとしたら、患者さんの希望が支えられることでしょう。
さらには、その人らしく生きるための支援ができます。体力がなくなっても好きな絵を描き続けたい、大好きな土いじりを続けたい、時々は外の空気に触れたいといった望みに対して、療法士は、患者さんの症状を把握しつつ安全にサポートできます。また、じっくりと付き合ってくれるのも訪問リハビリならではです。そうした望みが叶うことにより患者さんのQOLが高まり、生きる希望につながります。引いては、それが家族にとっての大きな喜びにもなるでしょう。
ソーシャルワーカー 提箸秀典
- 前の記事へ「第45回 ソーシャルワーカー」→
- 次の記事へ「第47回 担当者会議」→