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第48回 介護保険について

2014-06-17

 在宅ホスピスにおいて、介護保険サービスは患者さんの生活環境を整えるために欠かすことができません。医療と介護をいかにバランス良く提供するかが、在宅ホスピスの良し悪しを決めると言って良いでしょう。
 介護保険制度は、平成12(2000)年の介護保険法の制定に伴いスタートしました。以前のわが国では、自宅での介護は家族が担うのが当たり前でしたが、介護保険制度によって社会全体で介護を担っていくこととなりました。

Q1.介護保険サービスにはどのような種類がありますか?

 介護保険サービスは、患者さんが療養している場所によって、利用できる内容が「在宅サービス」と「介護施設サービス」に分かれます(表1)。介護保険制度を利用することにより、介護サービス料金の原則1割負担で利用することが可能になります。在宅ホスピスを受ける患者さんのように、自宅で療養する方は在宅サービスを利用します。
 介護保険サービスは、原則65歳以上の方が利用対象者となります。これを第1号被保険者と言います。市区町村に申請した後、要介護または要支援の認定を受けた方が介護保険サービスを利用することができます。そのほか40歳~64歳で、がんなどの特定疾病をお持ちの方も申請することが可能です。こちらを第2号被保険者と言います。

Q2.介護保険サービスを利用するためにどのような手続きが必要ですか?

 お住まいの市区町村の介護保険担当窓口に本人か家族が申請すると、訪問調査→1次判定→二次判定(審査会)と進み、申請から約1ヶ月を経て認定結果が通知されます(図1)。その結果を受けた後から介護保険サービスが利用可能になります。
 それぞれ要介護度によって支給限度額が決められており、限度額内であれば1割負担で介護サービスを利用でき、限度額を超えた部分は10割を負担することになります(表2)。ケアマネと相談しながら限度額の範囲内で必要な介護サービスを利用できるように、上手にプランを立てることが重要です。
 がん患者さんの場合は状況の変化が著しいため、認定結果が届くまでの1ヶ月間に残念ながら間に合わないことがあったり、申請した時点の身体状況と大きく変わってしまい、実際よりも低い介護度の結果が出るということが時々あります。こうした問題に対して厚生労働省は、がんの患者さんに対する以下のような緩和措置を講じています。

① 認定結果が出る前であってもサービスを利用開始することができる。
② 市区町村は申請から審査会までを迅速に対応し、できるだけ早く認定結果を出す。
③ 認定結果が出た後でも身体状況に合わせて再認定の申請をすることができる。
④ 介護用ベッドや車椅子は要介護2以上の方が利用できるが、医師の意見があれば要支援1・2、要介護1の方でも利用することができる。

 このように介護保険制度は、現在ではがん患者さんにとって利用しやすくなっています。

Q3.在宅ホスピスではどのような介護サービスが必要となりますか?

 まずは、安全で安楽な生活を整えるために福祉用具を利用する方が多いです。特にほとんどの方が介護用電動ベッドを利用します。これは患者さんが安楽に過ごせるばかりではなく、お世話する家族にとっても介護負担を軽くします。ベッド本体とマットレスを組み合わせてレンタルしますが、マットレスは通常の物のほか、褥瘡(床ずれ)予防マットレスやエアーマットレスがあり、皮膚や全身状態に合わせて変更できます。
 このほか、生活での安全を考えて車椅子や簡易手すりをレンタルしたり、シャワーイスやポータブルトイレを購入する方もいます。シャワーイスやポータブルトイレなどのように患者さんの肌が直接触れるものはレンタルではなく購入になりますが、これも介護保険制度により価格の1割負担で購入することができます。
 患者さんの病状が悪化し、身体状況が変化してきた時には、お世話をするのが大変になってくる場合があります。そのような場合には、訪問介護(ホームヘルパー)をうまく活用すると良いでしょう。訪問介護の内容には、掃除、洗濯、調理などの家事支援と、排泄、更衣、洗面、清潔、簡単なケアなどの身体介護があります。平成24年4月から「24時間定期巡回・随時対応型訪問介護サービス」という新しいサービスが開始され、定期的な訪問介護のほか、必要な時は24時間いつでも対応してくれます。
 また、自宅の浴室を使うのが難しくなった方には、訪問入浴介護が喜ばれます。専門の介護士や看護師がベッドサイドまで浴槽を持ち込んで、寝たままゆったりとお湯に浸かりながら入浴介助をしてくれるサービスです。

ソーシャルワーカー 提箸秀典


表1 介護保険サービスの種類
[在宅サービス]

家庭などに訪問を受けて利用するサービス
  • 訪問介護(ホームヘルパー)
  • 訪問入浴介護
  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 居宅療養管理指導
家庭などから施設に通って受けるサービス
  • 通所介護(デイサービス)
  • 通所リハビリテーション(デイケア)
施設に入所して受けるサービス
  • 短期入所生活介護
  • 療養介護(ショートステイ)
  • 特定施設入居者生活介護(有料老人ホームなどでの生活介護)
福祉用具や住宅改修など
  • 車椅子やベッドなど福祉用具の貸与
  • 入浴や排泄に使用する福祉用具購入費の支給
  • 手すりの取り付けなど住宅改修費の支給
その他
  • 認知症対応型共同生活介護(グループホーム・要介護のみ)
  • 通所を中心にサービスを組合せた小規模多機能型居宅介護など

[公的介護施設サービス (要介護1~5の人が対象)]

特別養護老人ホーム 常に介護が必要で在宅での生活が困難な方が入所
介護老人保健施設 状態が安定し、家庭に戻れるようにリハビリテーションを中心とする医療ケアと介護を受ける方が入所
介護療養型医療施設 急性期の治療が済み、長期の医療や医学的管理の介護の必要がある方が入所可

表2 在宅サービスの支給限度額

介護度 支給限度額(月) 福祉用具購入費 住宅改修費
要支援1 49,700円 1年間で10万円 同一住宅につき20万円
要支援2 104,000円
要介護1 165,800円
要介護2 194,800円
要介護3 267,500円
要介護4 306,000円
要介護5 358,300円

図1 介護保険サービスを利用するまでの流れ

申請
本人か家族が市区町村の介護保険窓口に介護保険被保険者証を添えて「要介護(要支援)認定」の申請をします。
地域包括支援センターや居宅介護支援事業所に申請の代行を依頼することもできます。
矢印
訪問調査
市区町村の調査員が自宅または入院先に訪問して心身状態などの聞き取り調査を行います。
矢印
一次判定
訪問調査の結果に基づき、コンピューター判定が行われます。
主治医意見書
かかりつけ医に病状や認知症、障害などについて意見を求めます。
矢印
二次判定(審査会)
一次判定結果と主治医意見書をもとに、どれくらいの介護が必要か審査を行います。
矢印
認定・結果通知
要介護1~5、要支援1・2、非該当(自立)の8区分に認定され結果が通知されます。
非該当(自立)を認定された方は介護保険制度を利用することができません。

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