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第54回 患者の意志決定—インフォームドコンセント、セカンドオピニオン、アドバンスケアプラニング—

2014-08-21

 がん医療において、患者さんが治療について意志決定(自分の意志で治療法などを選択すること)することがとても重要になります。特にがんが進行し、抗がん治療を続けるか中止するかといった決定は大変難しい選択です。患者の意志決定に関するキーワードについて説明しましょう。(横文字ばかりで恐縮です)

1.インフォームドコンセント(説明の上での合意)
 
 インフォームドコンセント(Informed Consent、略してIC)は「治療法について医師が患者さんに説明した上で同意する」ことです。ICという概念は第二次世界大戦後に生まれましたが、患者さんの権利であるという側面が強調されます。逆に言うと医師にとってはICは義務であるということになります。ICは大切な概念ですが、医師がこれを義務的に行うと患者さんにとってはかえって負担になってしまうことがあります。すなわち、医師が「治療法の選択肢を説明したのですから、後はあなた(患者)が決めて下さい。」というふうになってしまうと、非常に難しい選択を患者が強いられることになってしまいます。
 

2.セカンドオピニオン
 
 治療法などについて、現在の主治医ではない他の医師の意見を聞くことです。患者さんにとって医師が説明する治療法はただでさえ難しいのに、選択肢が複数になるとその中から一つを決めることはとても困難です。現在では、そのような患者さんのために他の医師の意見を聞くことが一般的になってきました。そして、がんセンターやがん治療専門病院ではセカンドオピニオン外来を設置しているところが多くなってきました。
 他の医師のセカンドオピニオンを聞くためには、現在の主治医に患者の希望を伝え、診療情報提供書とレントゲンやCT写真の貸し出しをお願いしなければなりません。セカンドオピニオンは患者さんの権利ですから、患者さんから現在の主治医に「セカンドオピニオンを受けたいのです。」ということを率直に伝えると良いでしょう。そのような要望に快く対応しない医師は逆に信頼できないかも知れません。

3.アドバンスケアプラニング

「アドバンスケアプランニング」は欧米からもたらされた新しい考え方です。
 例えば、患者さんが再発進行がんのように重い病気になったとします。将来予想される病状の変化に対し、患者、家族、医療者が集まり、どのような治療をするか、終末期にはどこで過ごしたいかといったことを前もって話し合います。患者の価値観や希望、家族の意見を踏まえることを重視します。話し合いは病状の変化に応じてその都度行います。
 健康な時は「自宅で最期まで過ごしたいと」希望していても、大部分の人は病院で亡くなっています。なぜでしょう。患者は目の前の治療に集中します。そして、自分の病状が将来どのように変化するか分からず、いざ自宅で過ごしたいと思っても、条件が合わず間に合わないということが起こってしまうのです。
 がん治療は非常に進歩しています。以前は治療の対象にならなかったような終末期の患者にも比較的副作用の少ない抗がん剤が使えるようになりました。場合によっては死ぬまで〝治療〟を受けることが可能なのです。
 最期は自宅で家族とともに過ごしたいと考えているなら、どこかでがんに対する治療を中止しなければなりません。「アドバンスケアプランニング」ではそういったことも話し合います。この考え方ががん治療の現場に広がることを願います。

院長 前野宏

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