ホームケアクリニック札幌
緩和ケア訪問看護ステーション札幌

ホスピスのこころ大切にするクリニック・訪問看護ステーション

第59回 看取りのパンフレット

2014-06-04

 患者さんに残された時間がそろそろ週単位から日にち単位に変わると予想される時期に、医療者(当院では看護師)からご家族に向けて、看取りについて説明をします。これから起こると予想されることを説明することにより、ご家族は安心して”その時“を迎えることができます。不安な時には繰り返し読み直すことができ、一緒に説明を聞く事ができなかった方も見られるように、大切な事柄を解りやすくまとめた冊子を準備しています。これが看取りのパンフレットです。
 以下に、当院が使用しているパンフレットに書かれている文章と実際に看護師が行っている説明内容を示します。

1)1日のほとんどを眠って過ごし、逆に興奮して何時間も寝ない日があります。家族や時間、場所がわからなくなり、おかしな事を言って周囲を驚かせたりします。声をかけても返事がなくなる時が来ます。ご本人は最後まで耳は聞こえています。

2)排泄のコントロールが出来なくなり、もれてしまう事もあります。また、尿の量や回数が減っていきます。

 一般的には亡くなる1~2週間位前から、眠っている時間が長くなり、排泄や食事などの日常生活に介助を必要とするベッド上の生活へと変化し、意識状態も少しづつ変化していきます。患者さんに対する全面的な介助が必要となるのはこの時期だけともいえます。患者さんは意識が混濁した状態になっても、ご家族が傍に居る温かい雰囲気を感じているので、普段通りの生活を営むことや声掛けが大切になります。

3)無理に食べるとむせる様になります。食べたい時に好きな物を少しずつ食べるのが一番むせない様です。全く食べられなくなり家族は不安になりますが、ご本人は余分なエネルギーが必要なくなったと教えてくれているのです。

4)点滴による強制的な水分補給は体がむくんだり、痰が多くなって、かえって苦しい状態になることがあります。医療的な対応より、楽な体位にしたり体をさすったりする事がご本人を楽にしてあげられます。

 病状が悪化してくると、食事摂取量が段々少なくなり、最終的には何も口にすることができない状態になります。しかしそれは自然なことで、末期の状態では栄養を入れることが元気になることに結びつきません。患者さんが最早食べられなくなり、だるさが出てくると“点滴でもしたら楽になるのでは”と考えがちですが、点滴をすることは逆効果になることが多いのです。

5)呼吸の変化が一番家族を不安にさせます。のどの奥でゼロゼロ音がしたり、苦しそうな声がもれたりします。ご本人は意識が低下しており苦痛は感じていません。呼吸は不規則になり、肩や顎を動かして息を吸い込み、時々何十秒も息を休んだりして弱くなっていきます。

6)手足が冷たくなり色も悪くなっていきます。ご本人は冷たさも感じなくなっています。

 患者さんが亡くなる直前には血圧が下がり脈も触れにくくなります。循環障害(チアノーゼ)が起こり、手足の先から紫色に変化します。呼吸もリズムが乱れ、間隔があき、弱まりながら徐々に最期の呼吸を迎えます。亡くなる直前に下顎呼吸と呼ばれる顎を大きく動かし喘ぐような呼吸がみられることもあります。また、舌が喉に落ち込み、自分の唾液や分泌物さえも出すことができず、ゴロゴロするような音(死前喘鳴)やいびきのような呼吸がみられることもあります。ご本人は意識が低下し苦痛を感じていない状態にありますが、一見辛そうに見え、ご家族が不安になるかもしれません。この様な時には顔や身体を横に向けて首のポジションを整えるなど体位の工夫をしてみましょう。これはご家族でも十分にできる対応です。また、この時期は体温調整も難しく、高熱がみられることもありますが、ご本人は苦痛を感じていないため、無理に下げる薬剤を使うよりは、脇の下や頭部を冷やす等心地良いと思われる対応を行います。

 以上のように患者さんに起こる身体の変化を知ることにより、ご家族は最期まで落ち着いて見守ることが可能になります。病院でなければ出来ない対応ということは殆どないと言って良いでしょう。

Q.最期の時を迎えたら家族は何をすれば良いですか? 

・ご家族だけで水入らずのお別れをして下さい。

  最期の時、医療者が立ち会うことは多くの場合必要ありません。ご家族だけの大切な時間を過ごして頂くことを大切にしているからです。しかし、不安が強い場合などはいつでも連絡を頂き対応しています。

・24時間いつでも連絡して下さい。救急車や警察を呼ぶ必要はありません。

  救急隊や警察を呼んでしまうと、場合によっては検死になってしまい、静かな家族だけのお別れが台無しになってしまいます。まず、あらかじめ指定された連絡先に連絡して下さい。最期の呼吸を確認した後、連絡を頂いてから医師と看護師が訪問対応します。医師による死亡確認を行い、看護師による最期のケア(エンゼルケア)をご家族の希望に沿って行います。

・葬儀関係者に来てもらうのは、医師の診察後になります。

  看護師とケアの時間や流れなどを相談の上、連絡して頂くので十分です。

 看護主任 梶原陽子

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